講演会「未来を描こう、語ろう」を開催しました
【企画概容】
開催日時:2007年11月10(土)
場所:東京大学本郷キャンパス 法文1号館 315号室
主催:AGS東京大学学生コミュニティ( UTSC )、AGS UTSC Alumni
参加人数:約20名
企画名:AGS 東京大学学生コミュニティ × Alumni 共同企画>
「未来を描こう、語ろう」
プログラム:
16:00 〜 17:00 :講演会 講演者 田邉 敏憲 氏(富士通総研主席研究員)
「21世紀 日本の地政と新産業戦略」
17:00 〜 18:00 :講演者 × Alumni によるパネルディスカッション
「持続可能な社会に向けたそれぞれの役割とは」
パネラー
田邉 敏憲 氏(富士通総研主席研究員)
湯原 哲夫 氏(東京大学 サステナビリティ学連携研究機構 特任研究員)
神谷 勇樹 氏(ボストンコンサルティンググループ)
田中 幸夫 氏 (東京大学 新領域 国際協力学専攻 助教)
原 圭史郎 氏(大阪大学 サステイナビリティサイエンス研究機構 特任助教)
【企画レポート】
「東京大学の学生たちよ、エリートたれ。」
私自身は、今日の講演会・パネルディスカッションを通して、そのようなメッセージを受け取りました。
エリートのもともとの語源を調べてみるとラテン語の「神に選ばれ者」という意味だそうです。とはいえ、えらいぞということではなく、他人のために死ぬ用意のある人のことを指しているようです。「死ぬ」というのは極端ですが、しかし単に自身の利害得失のみを考えるのでなく、今後の日本、そして地球の将来を背負ってゆく「エリート」たりたいと感じました。
「持続可能な社会を構築する」という事は、新しい社会を構築して行くということにおいては、おそらく人間の営みにおいて何も新しい事ではないと思います。私たちの先人たちも、理念を描き、それに向かって社会を創ってきました。何世代もの間、脈々と引き継いできたもの、それが今の社会なのでしょう。そして、今私たちの世代が、新しいビジョンを描き、そして形成していく役割を果たしていく立場になりました。それでは、今までとなにが違うのであろうか?次の3点が挙げられるのではないでしょうか。
・人類が現実問題として、有限な資源の問題にぶつかっていること
・社会が細分化し、複雑に相互依存していること
・スピード:より短いスパンの変化が求められている事。既存の社会を変えることに、一世代待つ事はできない。
本字の講演会、およびパネルディスカッションでは、これからの私たちが直面するであろう、課題に対して、大変重要な示唆が含まれていました。
まず第一に、ビジョンを描くこと。現在の延長で未来を語るのでなく、20年後、30年後のあるべき姿を語ること。
そして次に現実を分析し、問題の中から課題を洗い出す事。ここで重要となるのが、既存の思考法を越えた、新しい視点をえる知力である。具体的に講演の中で、田邉氏は、資源ない国にほんの持つ潤沢な資源について、中国五行思想の「木・火・土・金・水」に照らし示し、これを活用していくことが、これからの日本の大きなチャンスとなる事を主張された。
そして、最後に、課題解決のために、新しい仕組みを作ること、システムイノベーションを起こす事である。そのため、私たち一人一人はシステムイノベーターたらねばならない。では、システムイノベーターに大切なものとはなんであろうか?非常に多くの要素が挙げられるであろうが、今日の講演会およびパネルディスカッションで挙げられたことを二つ紹介したい。
ひとつは、湯原先生のおっしゃったキーワードである「自立的職業人」たることである。例えば学生は、企業に勤めると日々の仕事に忙殺されて、ほかの事に目が行かなくなるのではと考えがちであるが実際にはそうではない。どの企業も、次の世代の産業を興すことに必死になっているし、そのような環境の中では、世の中の動きを広く見据える事のできる、自立的職業人こそ求められるのである。単なる共同体の社会を気づくのではなく、そのような職業人の集まる、機能体となる事が望まれている。
もう一点は、人を巻き込むことである。システムイノベーションとはいえど、その根源にあるのは、社会システムの中にいる人である。原氏も、システムを使う人間を研究する事の重要性に言及されたが、結局は他者に影響を与え共同する事こそ、新しい仕組みを作ることに他ならないのだ。
今回、ご講演いただきました、田邉敏憲氏をはじめ、飛び入り参加をしてくださった、湯原先生、遠くより足を運んでくださった原氏、田中氏、神谷氏、そして参加してくださった皆さんに、深く感謝を申し上げます。知性と志を備えた、先人、先輩、そして仲間とつながっている自身の恵まれた環境を実感するともに、公を語り、行動に移す事を"Cool"であると思えるような、このようなコミュニティをより発展させていきたいと決意した次第です。



文責:東京大学大学院 工学系研究科地球システム工学
谷藤 遊
【講演要旨】
「21世紀日本の知性と新産業戦略」
1.21世紀に入り、人口増加、グローバル市場化の進展により、国債資源価格の高騰、賃金の中国やインドへの鞘寄せなど、世界経済のパラダイムシフトが明確になってきた。この結果、世界的規模で労働力としてのヒトの価値(賃金)に絶えず中国・インドなどアンカー国への鞘寄せ圧力が働く一方、ヒトの生存や経済成長に不可欠な財には需給の泰とかにより絶えず価格上昇圧力が働く構造が出現している。こうした財は、宇宙を構成する基本要素である中国五行思想の「木・火・土・金・水・(もくかどごんすい)」に象徴される自然資源である。
この間、6800余の島からなる日本の地政は。国土面積は焼く38万km2と世界第60位だが、領海・排他的経済水域(EEZ)は焼く447万km2と同6位で、7ヶ国と接する。しかも先進国切っての豊かな降雨量、高い森林比率、豊富な日射量と南北に長く多様な生物資源などに加えて、海底油田を除き海洋資源大国でもある。
2.こうしたパラダイムシフトの下で、各国の産業や企業の生産性・競争力は、国際商品(一物一価)かつインフレ財ともいえるこれらの自然資源の投入量(従って排出量も)を如何にReuseできるか、に依存する。
日本の海外輸入依存度が極めて高いこれら資源の皓仏予想を踏まえると、これまで日本に蓄積されてきたスクラップ鉄やプラスチック資源あるいは食品残渣などもふくめた国産資源の活用が、合理的な日本(企業)の行動となってくる。これが企業のReuse活動であり、Recycle活動である。さらに日本近海の豊かな海洋資源開発により、日本は世界的に顕在化しつつある「水・食料・資源・エネルギー・環境・安全」などにかかわる危機を克服できる展望が生まれる。
3.日本は、今次資源・エネルギー価格の項仏や、京都議定書基準など厳格な「地球温暖化対策ルール」をむしろチャンスと捉えるべきである。これら豊かな自然資源を活用し、同時に従来不得手だったシステム・イノベーションやマーケット・イノベーションを磨くことで、新産業戦略を打ち出すこともできる。さらに「コモンズ」「擬似大家族主義」といった新たな経済社会システムの再構築により、日本は「環境保全と経済成長」が両立する持続可能な経済社会を世界に先駆けて実現しうることになる。
3R活動推進、エネルギー自給率引上げ、食料自給率引上げ、海洋新産業の創出、国土修復といった循環型産業への構造改革は、地域における雇用を生み、疲弊が進む地域を含めて日本経済の持続可能性をもたらす。21世紀のアジアにとっても目標・規範たる産業改革となり、さらには「水・食料・資源・エネルギー・環境」の危機を共有するアジアとの連携・産業創出を目的とする「アジア海洋国家連携構想」などに発展することになるだろう。
(全体の枠組み)
第1章 日本の地政を生かした新産業戦略
1.21世紀世界経済のパラダイムシフト
2.東アジアの特徴
3.中国経済の高成長シナリオと制約要因
4.3つの課題解決手法と日本経済の再生
5.5つのイノベーション活用
6.日本の自然資源活用型5つの新産業戦略
第2章 2030年地域新エネ50%イニシアチブ
1.各国のエネルギー情勢と戦略
2.日本のエネルギー情勢とバックキャスティング手法ビジョン
3.長期エネルギービジョンと「地域エネルギー産業クラスター」
4.蓄電技術が地域新エネ50%の鍵
第3章 京都議定書をばねに地域分散型産業構造へ
1.京都議定書合意は5大施策で達成可能
2.石炭火力発電コスト(6円/kwh)倍増のインパクト
3.日本発の秩父バイオマスガス発電所登場
4.新「鉄は国家なり」論
5.地域の「地消地産型クラスター」と「環境取引所」
第4章 農林水産イノベーションと国土修復
1.21世紀の世界食糧事情
2.システムズ・イノベーションによる「農・食・医産業統合モデル」
3.農林業のマテリアル・イノベーション
4.「ソフトスチーム」・CAS・乾燥・ナノテク等加工イノベーションで食糧貯蔵革命
5.農畜産物のマーケット・イノベーション
6.日本列島修復論
第5章 日本の医食産業イノベーション
1.統合医療の世界的潮流と立ち遅れる日本
2.科学技術・産業政策による統合医療実現
3.末医療と「食の科学」
4.医療の統合イノベーションと地域再生
5.統合医療推進に向けた政策課題
第6章 海洋新産業戦略
1.画期的な海洋基本法の施行
2.なぜ今、海洋産業なのか?
3.世界トップクラスの海洋資源と未熟な海洋産業エンジニアリング
4.急務の深海底鉱物資源開発
5.「アジア海洋国家連係構想」と新たなファイナンス
第7章 「東アジア環境エネルギー共同体」構想と日中協力
1.中国経済成長における資源・環境制約と「循環経済」論
2.日本の環境対策の経験と日中共通の課題
3.東アジアの各種「環境エネルギーシステム」構築と共同運営
4.ポスト京都議定書基準へのアジア共同提案
第8章 新産業創出と金融イノベーション
1.新産業創出に向けた新たな金融の役割
2.世界に冠たる日本のIT活用中小企業金融
3.地域「環境取引所」構想と金融
4.日本発の「アジア海洋資源ファンド」「アジア環境ファンド」の創出
5.財政緊縮化での金融イノベーション
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